1.【医療事故】
医療に関る場所で、医療の全過程において発生するすべての人身事故。
以下の場合を含む。なお医療従事者の過誤、過失の有無を問わない。
〇死亡、生命の危険病状の悪化等の身体的被害及び苦痛、不安等の精神的被害が生じた場合。
〇患者が廊下で転倒し、負傷した事例のように医療行為とは直接関係しない場合。
〇患者についてだけではなく、注射の誤刺のように、医療従事者に被害が生じた場合。
2.【医療過誤】
医療事故の一類型であって医療従事者が、医療の遂行において
医療的準則に違反して患者に被害を発生させた行為。医療従事者に過失が明らかに認められる場合。
3.【ヒヤリ・ハット事例】
日常診療の現場で‘ヒヤリ‘としたり‘ハッ‘とした経験を有する事例。
具体的にはある医療行為が@患者には実施されなかったが、 仮に実施されたとすれば、
なんらかの被害が予測される場合A患者には実施されたが、結果的に被害がなく、
またその後の観察も不要であった場合。
4.【1:29:300ーハインリッヒの法則】
米国のハインリッヒ氏が労働災害の発生確率を分析した比率。
1件の重大な労働災害の発生以前に29件の擬似軽災害があり、
その29件以前に300件のヒヤリ・ハット事例がある。逆から言えば重大災害を防ぐ、
チャンスが329回もあるといえます。重大事故を防ぐにはその329件をいかに
情報収集を行ないフィードバックするかにかかっています。
5.【医療トラブル】
医療事故、医療過誤を含む医療関係者が関係するすべてのもめごとを含める。
6.【診療行為】
疾病の診療・治療・予防等を目的とする行為。通常は医療行為は犯罪にはならないが、
次の2点に反するときは違法となります。@患者の承諾がある。
A医療行為が社会的に相当な行為である。
7.【診療契約の法的性質】
〇請負契約
医師は患者の病気や怪我を治す義務があり、治せない場合には損害賠償を請求することが可能。
しかし、全ての病気が必ず完治するとは約束できないので一部の医療に適用される考えます。
〇準委任契約
医師は誠実な治療行為を遂行が義務であり、治せなくても、誠実に治療を遂行できれば
医師の義務は果たした事になる。一般的に医療行為はこの考え方が適用されています。
8.【医療過誤による法的責任】
〇民事責任
民事上の損害賠償責任。警察等が介入する事はなく、患者側と医療機関の
損害場以上を巡る問題になります。民事責任を問われる条件
は@過失、A因果関係、Bわるい結果の発生があった時です。法的には、次の2つが問われます。
@債務不履行責任
契約によって課される債務を債務者が履行しないがために発生する責任です。
この責任は契約を交わした関係者にだけ発生します。ですから病院等が患者に対する責任を問われ
医師や看護師は患者に対して責任を問われません。医師に過失がなかった事を証明する責任は、
病院側にあり、医療過誤が起きてから、10年経過すると損害賠償を、請求することができなくなります。
A不法行為責任
過失によって違法な行為を行ない、他人に損害を発生させた場合に発生する責任です。
契約関係がなくてもこの責任は生じるので病院や医師、看護師もその責任を追及されます。
医師に過失があった事を証明するのは患者側です。時効は2つあり、
@損害と加害者を知った時から3年A医療事故が起きてから20年です。
〇刑事責任
刑罰法規に該当する犯罪による責任が問われ、警察が捜査に入ります。
刑事責任としては懲役、禁錮、罰金という刑罰があります。
刑法211条の「業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは、
禁錮又は100万円以下の罰金に処する」は業務上過失致死傷罪に規定しています。
刑事責任が問われるのは@業務上の必要な注意を怠るA因果関係B患者の死傷です。
業務上過失致死・過失致傷罪の時効は5年です。
9.【行政責任】
医師法の規定に該当した時問われます。@罰金以上の刑に処せられた場合
A医事に関して犯罪又は不正行為があった場合B医師としての品位を損するような行為があった場合。
これらに該当した時、厚生労働大臣は戒告、3年以内の医業の停止、
免許取り消しの処分を医道審議会の意見を聴いた上で行ないます。
刑事責任に問われて行政責任が問われる時もあれば、問われないこともあります。
10.【使用者責任】
医師や看護師などを使用している病院などに認められる特殊な不法行為。
使用者責任を請求する際には患者側は医療機関の医師や看護師に過失がある事を、
立証する必要があります。損害賠償の責任の消滅時効は2つあり
@損害と加害者を知った時から3年A医療事故が起きてから20年です。
11.【損害賠償責任発生要件】
@医師の故意・過失
過失とは医師に課せられている注意義務違反に違反する事。故意とはわざと手術を失敗したり、
死亡させた場合。刑事責任が問われるのは故意と過失の両方が認められたときです。
〇注意義務・・・過失が認められるには注意義務の次の2要件必要になります。
@結果予見義務・・・自らの行為によってどのような結果が発生するか予見する義務。具体的には 診療によって患者にどのような影響が懸念されるかを予見する義務。
A結果回避義務・・・結果が生じそうになった場合にそれを回避する義務。具体的には診療の結果 患者が死亡したりしないようにする義務。
〇説明義務・・・債務不履行に基づく損害賠償を請求する際の説明義務の2要件です。
@診療行為に対する承諾を得るための説明・・・手術の際にその危険性や
他の治療法の有無などを説明する義務。医師が薦める診療行為に
患者が承諾したかどうかが前提になります。
A療養指導に対する説明・・・診療に際して、その診療結果を患者に報告して、
患者の今後の療養生活に対して具体的にアドバイスすること。薬の副作用や服用方法、生活態度など指導。
A因果関係
医師の過失により患者に被害が生じても過失と結果(被害)との間に因果関係が、
認められなければ損害賠償は認められない。
〇事実的因果関係・・・医師の処置後に患者の容態が悪化したとしても、処置以外の原因で患者の容 態が悪化した時は医師に対して損害賠償請求は認められない。
〇損害賠償の範囲の限定・・・医師の医療ミスにより入院期間を延長した結果、不慮の事故によりなく なった場合は医師に損害賠償請求は認めない事を言います。
〇相当因果関係・・・通常の事情で発生した損害(通常損害)は債務者(または加害者)に無条件で賠 償責任を負わせる。特別の事情で生じた障害(特別損害)は、債務者の(加害者) が予見できた場合にのみ損害のみに賠償責任を負わせる。
〇不作為型因果関係・・・医師が適切な処置をしなかったために患者が死亡した因果関係が不法行 為責任として問われる。
12.【損害】
患者は自分の受けた損害を算定する必要があります。その損害種類によって、算定方法が違います。
民事責任による損害賠償責任はとして次の7つが挙げられます。
@治療費は「症状が固定」をもって確定。
A入院雑費は1日あたり1500円。
B付添介護費は症状が特に重く、介護が必要な時に認められる。
C休業損害は休業によって発生した収入の減少分
D逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×ライプニッツ係数
E慰謝料は精神的損害にたいし、入院1ヶ月あたり50万円
F葬儀費は規模に関係なく150万円
〇損害責任
@医師が単独場合はその医師本人と医師を雇用している病院に損害賠償を請求できます。
Aチーム医療の場合は手術をおこなった医師が時間的・場所的に共同して、
不法行為を行なっていたと認められると連帯責任としてどの医師に対しても損害賠償請求ができる。
途中で担当の医師が変更した場合も共同して医療が行なわれたと言えます。
13.【過失相殺】
医師の診療行為に過失により、患者が被害を被った場合でも患者自身が
医師の指示に従わずいた事も病状が悪化した原因と認められるときに
損害賠償金額の減額される事があります。
5歳〜6歳の子供にも事理弁識能力があるとされ、過失相殺が認められています。
また被害者本人に過失が認められなくても被害者本人と身分上、
生活関係上一体をなすと認められるような関係にある者(同居の親族や内縁の妻)に
過失が認められるときは過失相殺が認められます。
14.【期待権】
過失・結果との高度の蓋然性が証明できなくても、過失がある以上は適切な治療を、
行なうという期待を侵害しているので、過失による悪い結果が発生した場合は
因果関係も肯定できるという考えです。
15.【相当程度の可能性】
過失があり、高度の蓋然性はなくても救命される相当の可能性がある場合相当程度の可能性が、
奪われたとして損害賠償責任を認める考えです。
16.【高度の蓋然性】
経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果の発生を招来した関係を、
是認しうる高度の蓋然性を証明すれば原因と結果の因果関係が認められる。
高度の蓋然性の確率とは80%〜90%の確率で結果が発生ることとされています。
17.【患者の自己決定権】
全て人は、十分な情報提供とわかりやすい説明を受け、自らの納得と自由な意思に基づき、
自分の受ける医療行為に同意し、選択し、或いは拒否をする権利を有する。と
「患者の権利法要綱案」でのべています。
18.【医師の裁量権】
医師の裁量権の範囲内で患者の病状に対する治療法の選択が認められています。
この範囲内だと損害賠償責任はありません。医師の裁量権の行使が認められるには
次の3要件があります。@診療時における、一般的に是認された医学上の原則に従っていること
A医療方法を選択するに際して、他の方法と、充分な比較検討がなされたこと
B患者の自己決定権を保障していること。現在は患者の自己決定権が重視され、
充分な比較検討をせずに治療法を選択した時は医師の裁量権の濫用とし判決も出ています。
|